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日本一のへひりにん

日本一のへひりにん_b0352427_13455256.jpgいつものことながらひと月遅れですが、
先月語ったおはなしは高知県幡多地方の昔話『日本一のへひりにん』です。

高知県と書きましたが、日本各地に似たものが伝わっていて、
朝鮮、中国にも類話があるそうです。

室町時代にはすでに成立していたという古いお話で、
私も昨年京都に行った時に偶然、
京都国立博物館でこの話の絵巻が展示されているのを見ました。

題名からして可笑しいのですが、下ネタの笑い話です。
(声に出してこの題を言うと、ちょっと楽しい気分になります。)

じいさまが、勝手に木を伐採してはいけないのにたきぎとりに行き、
番人に見つかり咎められたところを、
自分は日本一のへひりにんだ!と言って屁の妙技を見せて許してもらい、
それを欲張りなじいさまが真似をして失敗するというお話です。

あらすじはとてもシンプルですが、
言葉遣いがとても面白く、つい口に出して言いたくなります。

これまでいくつかの素話をしてきましたが、昔話は言葉の使い方が絶妙で、
ちょっとした短いくだりがさし挟まれているおかげで物語に共感できたり、
登場人物の人となりがわかったり、説得力が増している気がします。
筋を追うだけではない、物語る言葉としての作用が強いと感じます。

6年生のクラスは私の淡い期待をよそに笑い声はおきませんでしたが
(6年生にもなると反応がクールになるそうですけれど)、
欲張りなじいさまが粗相をした「びちびち」に「ゲ○だ、○リ!」と言ったり、
最後、売り物に「びちびち」をかけられた砂糖売りのばあさまが
「欲張りなじいさまの尻をそいでしまいましたと。」
と終えると「ひでえ!」という声が聞こえたりと、それなりに受け止めてはくれたようです。

年頃にもよるでしょうが、「笑い」を起こすのは難しいなあ、と改めて感じました。

底本は『ちゃあちゃんのむかしばなし』(中脇初枝・再話、福音館書店)です。


日本一のへひりにん_b0352427_13504722.jpg今回は冬ということで、
自分が絵を担当した『ゆきドラゴン』(加藤志異・作、学研おはなしプーカ2016年2月号)も読み聞かせました。
絵の世界も、これはこれで言外の様々な感覚を込めることができるし、読み取れると思います。

ただ図示するのではなく、画面の向こうに本当にその世界があるように、
手触りや匂いまでも描いていきたいと思っています。
by yoinezumi | 2017-01-15 14:06 | おはなし