2017年 10月 13日
わらと炭とそらまめ

グリム童話の「わらと炭とそらまめ」にしました。
ずいぶん前から何故かツボにはまり、好きなお話だったんです。
でもちょっと引っかかることがあって、
これまで素話に選ばずにいました。
まずはあらすじから。
おばあさんの家で、
そら豆が、お鍋へ入れられる寸前で、床に転がり落ちます。
そこにいたのは、かまどで燃やされそうになったのを逃げ出した、藁。
そこへ、火のおこった炭が、かまどの中から跳ね出してきます。
この3つが、
お互いに、命からがら逃げ出したことを打ち明けて、
みんなで仲良く旅に出ることにします。
ところがすぐに大きな川にぶちあたり、
藁が、自分が橋になるから、そら豆と炭はその上を渡ればいい、
と横たわります。
いや…それ、どうかな?
藁が橋になる??
と、読んでる方は思う訳ですが…
せっかちな炭が、すぐに駆け出して藁の上に乗りますが、
ざあざあ言う川の流れに怖くなって立ち止まってしまいます。
しかも炭の火はまだ消えてなかったらしく、
藁はあっというまに燃えてしまい、
炭も水に落ちてじゅっと音を立ててお陀仏に。
あ〜あ、言わんこっちゃない…と、これも、読み手の心の声です。
さて、
この顛末を見ていたそら豆が、なんとも乾いた反応を!
そら豆は、ばかばかしくなって大笑いするのです。
ところが、あんまりひどく笑いすぎて、
からだがぱちーん!と破裂してしまいます。
そこへ居合わせた仕立て屋さんが情け深い人で、
やぶけた箇所を縫い合わせてくれ、
そら豆は一命を取り留めますが、
仕立て屋さんが黒い糸を使ったので、
今でもそら豆には黒い縫い目があるのですよ、
というお話。
…アナーキーというか、ブラックジョークというか、
大人っぽい意地悪なセンスを感じます。
私は好きだけど、
子ども達にどんな風に話したらいいかな…と迷いがありました。
でも、何度も口に出して覚えているうちに、
これは結構役に立つ話では!?と、はたと気づきました。
藁や炭の取り扱い注意って話にもとれるんです。
最初、
「(おばあさんが)火がはやく燃えあがるように、藁をひとつかみ、くべました」
というくだりで、
わらは火がつくとあっというまに燃えることがわかる。
そして、炭はいちど火がおこると、
一見、灰になって燃え尽きたように見えても、
中にまだ火がついていることがあります。
だから藁が燃えて炭は水に落ちてしまう。
水に落ちれば、じゅっと音をたてて火は消えます。
このおはなしを聞くうちに、
藁と炭の性質、火の取り扱い方がわかるんじゃないかしら??
というわけで、自信を持って、おはなしをしたのでした。
原文がどうなっているのか知りませんが、
岩波文庫の翻訳(金田鬼一)は、3人の会話口調もとても面白くて、
それぞれの性格がよく現れているので、
語るのが楽しいです。
藁は気さくで気のいい奴、
炭はちょっと心配性?
そら豆は、
仲のいいお友達になりましょう、
なんてお上品に調子のいいことを言っておきながら、
最後には仲間の不幸を笑ったりして、
けっこうひどい奴だったりもします。
こんなところも、人生の苦みとしてお話の中に組み込まれているのかも、
なんて深読みもしたくなったりします。
底本は「完訳グリム童話 1」(岩波文庫)です。
by yoinezumi
| 2017-10-13 18:55
| おはなし