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わらと炭とそらまめ

だいぶ遅れがちな投稿ですが…
わらと炭とそらまめ_b0352427_11042713.jpg6月のおはなしは、
グリム童話の「わらと炭とそらまめ」にしました。

ずいぶん前から何故かツボにはまり、好きなお話だったんです。
でもちょっと引っかかることがあって、
これまで素話に選ばずにいました。

まずはあらすじから。

おばあさんの家で、
そら豆が、お鍋へ入れられる寸前で、床に転がり落ちます。
そこにいたのは、かまどで燃やされそうになったのを逃げ出した、藁。
そこへ、火のおこった炭が、かまどの中から跳ね出してきます。

この3つが、
お互いに、命からがら逃げ出したことを打ち明けて、
みんなで仲良く旅に出ることにします。

ところがすぐに大きな川にぶちあたり、
藁が、自分が橋になるから、そら豆と炭はその上を渡ればいい、
と横たわります。

いや…それ、どうかな?
藁が橋になる??
と、読んでる方は思う訳ですが…

せっかちな炭が、すぐに駆け出して藁の上に乗りますが、
ざあざあ言う川の流れに怖くなって立ち止まってしまいます。

しかも炭の火はまだ消えてなかったらしく、
藁はあっというまに燃えてしまい、
炭も水に落ちてじゅっと音を立ててお陀仏に。

あ〜あ、言わんこっちゃない…と、これも、読み手の心の声です。

さて、
この顛末を見ていたそら豆が、なんとも乾いた反応を!

そら豆は、ばかばかしくなって大笑いするのです。
ところが、あんまりひどく笑いすぎて、
からだがぱちーん!と破裂してしまいます。

そこへ居合わせた仕立て屋さんが情け深い人で、
やぶけた箇所を縫い合わせてくれ、
そら豆は一命を取り留めますが、

仕立て屋さんが黒い糸を使ったので、
今でもそら豆には黒い縫い目があるのですよ、
というお話。


…アナーキーというか、ブラックジョークというか、
大人っぽい意地悪なセンスを感じます。
私は好きだけど、
子ども達にどんな風に話したらいいかな…と迷いがありました。

でも、何度も口に出して覚えているうちに、
これは結構役に立つ話では!?と、はたと気づきました。

藁や炭の取り扱い注意って話にもとれるんです。

最初、
「(おばあさんが)火がはやく燃えあがるように、藁をひとつかみ、くべました」
というくだりで、
わらは火がつくとあっというまに燃えることがわかる。

そして、炭はいちど火がおこると、
一見、灰になって燃え尽きたように見えても、
中にまだ火がついていることがあります。
だから藁が燃えて炭は水に落ちてしまう。
水に落ちれば、じゅっと音をたてて火は消えます。

このおはなしを聞くうちに、
藁と炭の性質、火の取り扱い方がわかるんじゃないかしら??

というわけで、自信を持って、おはなしをしたのでした。

原文がどうなっているのか知りませんが、
岩波文庫の翻訳(金田鬼一)は、3人の会話口調もとても面白くて、
それぞれの性格がよく現れているので、
語るのが楽しいです。

藁は気さくで気のいい奴、
炭はちょっと心配性?

そら豆は、
仲のいいお友達になりましょう、
なんてお上品に調子のいいことを言っておきながら、
最後には仲間の不幸を笑ったりして、
けっこうひどい奴だったりもします。

こんなところも、人生の苦みとしてお話の中に組み込まれているのかも、
なんて深読みもしたくなったりします。

底本は「完訳グリム童話 1」(岩波文庫)です。

by yoinezumi | 2017-10-13 18:55 | おはなし