2017年 12月 23日
白いかも

前月の下ネタ民話(笑)に対する
女子のクールな反応(それはそれで面白かった)から、
今回も同じクラスなので、
次はお姫さまやお城の出て来る
美しく華やかなものにしてみようと思い、
選んだのですが、これはこれでなかなかのハードな話なのでした。
あらすじを。
***
美しいお妃と結婚した殿様が、すぐに遠くへ旅立つことになります。
殿様は、御殿の外に出てはいけない、悪い人たちとつきあってはいけない…と
色々言いつけを残しました。
お妃は言いつけを守って暮らしますが、
ある日、やさしそうなひとりの女がやってきます。
その女にうまく乗せられたお妃が、
約束を破って、庭の泉で水浴びを始めたとたん、
女は豹変して呪文をかけ、
お妃を白いかもに変えてしまいます。
そして殿様が戻って来ると、
女はお妃になりすますのです。
女は悪い魔女でした。
白いかもは、卵をうみ、3人の子どもたちを育てます。
子どもたちはやんちゃで、
ある日御殿の庭に入り込みます。
魔女はすぐに気がついて、子どもたちを呼び寄せ、
なんと殺してしまいます。
白いかもが、子どもたちがいなくなったことに気づき、
御殿に飛んでいくと、
子どもたちの亡骸が並んでいます。
するとかもは人間の言葉で歌いだし、
それを聞いた殿様がこれまでのいきさつを知るのです。
そこでかもをつかまえた殿様がとなえる言葉がとても良くて。
「しらかばはうしろに、美しいむすめは前に立て!」
というのです。
すると殿様の後ろにしらかばが枝を伸ばし、
美しいむすめ(つまり、お妃)が殿様の前に現れます。
それから、かささぎが運んで来た
いのちの水と、ものいう水を子どもたちにかけると、
子どもたちも生き返るのです。
最後に衝撃の場面。
魔女は、馬のしっぽにしばりつけられ、
野原をひきずりまわされます。
足がもげたあとに火かき棒がはえ、
手がもげたあとに熊手がはえ…と続き、
最後には、風が骨をまき散らし、
魔女は影も形もなくなりました、と終わります。
***
さて、教室の子どもたちの反応は!
最初から最後まで、しーん、と静かに集中して聞いてくれました。
これは、今までに初めてというくらいでした。
大概、最初は少しざわざわ、がたがた、と声や音がして、
話が進むに連れて静かになるのですが、
このおはなしは、冒頭からみんな黙って聞いていました。
最初から何か起こりそうな予感で始まるからでしょうか。
次から次へと展開して、
悪い魔女や、殿様の呪文など、
おはなしが鮮やかだからでしょうか。
このおはなし、その後ほかの所でもしましたが、学校でも、外でも、
大人の方々からは、「怖いですね」というご感想をいただきました。
一応ハッピーエンドとはいえ、随分怖いお話なんですよね。
最後のくだりなどは、子どもに聞かせてよいものか、
という心配も生まれそうです。
私自身は「大丈夫だ」と思っていまして、
専門家ではないので、にわか知識ではありますが、
怖いものが出て来るけど最後には消えてなくなる、ことが、
心の中にある葛藤や、不安などを克服する、
という心理学的な効果もあると、本で読んだことがあります。
だから、怖いものは怖く描かれなければならず、
それが最後にすっかり消えることが大事、と思っています。
それに昔話には、残酷な場面があっても、
残虐には描かないという特徴があるようです。
リアルじゃない。
この話も、子どもたちはすぐに生き返るし、
魔女の体も、すぐ何かがはえてくる。
自分が子どもの頃には、怖い昔話にはどきどきしながらも好きだったし、
聞いた後には、何も嫌な気持ちは残らなかったので、
その時の感覚も含めて、「大丈夫なんだ」と感じています。
底本は、『ロシアの昔話』(内田莉莎子編・訳、福音館文庫)です。
by yoinezumi
| 2017-12-23 16:43
| おはなし