人気ブログランキング | 話題のタグを見る

ならずもの

ならずもの_b0352427_14461206.jpg久しぶりの更新です。
1月に語ったお話について書きます。

グリム童話、『ならずもの』。

この話にでてくる登場人物たちは、
現実の世界ではかなり迷惑で面倒な連中です。
ところが、これがコミカルに描かれていて、
妙に爽快感もあるのでした。

ではあらすじを。

おんどりとめんどりが、クルミを食べに山へ行きます。
たらふく食ったら、歩いて帰るのが面倒になり、
おんどりが即席で作った車で帰ることにします。

ところが、どちらが車を引っ張るかで喧嘩になります。
この喧嘩のやりとりが、語っていてちょっと気持ちがいい。

さらに通りかかったあひるとも争いになり、
負けたあひるが車を引くことになりますが、
ここでも、乱暴な言葉が出てきます。

こんな風に憎々しい言葉って、
実生活では大概、理性で抑えると思いますが、
でもこれはおはなしなので!
思いっきり嫌な感じで吐き出すと、
不思議と愉快な感じがしてくるんですよね。

「へん!ありがたいこった!」
「いやだね、そんな話じゃなかったぜ。」
「まっぴらごめんだよ。」
「誰がてめえたちに、俺様のクルミ山へ入れって言った!」
「こっぴどい目にあわしてやるから」

等々、いや〜な感じで口に出すと、
なかなか気味がいいんですよ(笑)。

やがて車には、待ち針と縫い針も乗り込みます。
突然、生き物じゃないものもやってきて、しゃべったり歩いたりする。
これも面白いです。

そして、とある宿屋に泊まった面々は、
どんちゃん騒ぎをして、
宿屋の主人には代金も払わず、
それどころか、ひどい目にあわせる仕掛けをして、
自分たちはとんずらしてしまいます。

話の最後は、さんざんな朝を過ごした宿屋の主人が
「これからは、ならずものは決して泊めまい。」と決意して終わります。

一見、教訓のような形で締められますし、
実際、連中のふるまいは、いけません。
でも、語り方がとってもおかしいので、
嫌な感じがしないんです。
むしろ、このはなしの醍醐味は、
ならずものたちの気分を味わうことなんじゃないかと。

やってはいけないことを、お話の中でやってしまう。
それを語ったり聞いたりすることで、
心に溜まった澱が解消されるから、
なんだか楽しくなるのかもしれません。

底本は、『おはなしのろうそく17』(東京こども図書館)です。
by yoinezumi | 2018-04-27 14:03 | おはなし