2018年 04月 27日
ならずもの

1月に語ったお話について書きます。
グリム童話、『ならずもの』。
この話にでてくる登場人物たちは、
現実の世界ではかなり迷惑で面倒な連中です。
ところが、これがコミカルに描かれていて、
妙に爽快感もあるのでした。
ではあらすじを。
おんどりとめんどりが、クルミを食べに山へ行きます。
たらふく食ったら、歩いて帰るのが面倒になり、
おんどりが即席で作った車で帰ることにします。
ところが、どちらが車を引っ張るかで喧嘩になります。
この喧嘩のやりとりが、語っていてちょっと気持ちがいい。
さらに通りかかったあひるとも争いになり、
負けたあひるが車を引くことになりますが、
ここでも、乱暴な言葉が出てきます。
こんな風に憎々しい言葉って、
実生活では大概、理性で抑えると思いますが、
でもこれはおはなしなので!
思いっきり嫌な感じで吐き出すと、
不思議と愉快な感じがしてくるんですよね。
「へん!ありがたいこった!」
「いやだね、そんな話じゃなかったぜ。」
「まっぴらごめんだよ。」
「誰がてめえたちに、俺様のクルミ山へ入れって言った!」
「こっぴどい目にあわしてやるから」
等々、いや〜な感じで口に出すと、
なかなか気味がいいんですよ(笑)。
やがて車には、待ち針と縫い針も乗り込みます。
突然、生き物じゃないものもやってきて、しゃべったり歩いたりする。
これも面白いです。
そして、とある宿屋に泊まった面々は、
どんちゃん騒ぎをして、
宿屋の主人には代金も払わず、
それどころか、ひどい目にあわせる仕掛けをして、
自分たちはとんずらしてしまいます。
話の最後は、さんざんな朝を過ごした宿屋の主人が
「これからは、ならずものは決して泊めまい。」と決意して終わります。
一見、教訓のような形で締められますし、
実際、連中のふるまいは、いけません。
でも、語り方がとってもおかしいので、
嫌な感じがしないんです。
むしろ、このはなしの醍醐味は、
ならずものたちの気分を味わうことなんじゃないかと。
やってはいけないことを、お話の中でやってしまう。
それを語ったり聞いたりすることで、
心に溜まった澱が解消されるから、
なんだか楽しくなるのかもしれません。
底本は、『おはなしのろうそく17』(東京こども図書館)です。
by yoinezumi
| 2018-04-27 14:03
| おはなし