ならずもの

b0352427_14461206.jpg久しぶりの更新です。
1月に語ったお話について書きます。

グリム童話、『ならずもの』。

この話にでてくる登場人物たちは、
現実の世界ではかなり迷惑で面倒な連中です。
ところが、これがコミカルに描かれていて、
妙に爽快感もあるのでした。

ではあらすじを。

おんどりとめんどりが、クルミを食べに山へ行きます。
たらふく食ったら、歩いて帰るのが面倒になり、
おんどりが即席で作った車で帰ることにします。

ところが、どちらが車を引っ張るかで喧嘩になります。
この喧嘩のやりとりが、語っていてちょっと気持ちがいい。

さらに通りかかったあひるとも争いになり、
負けたあひるが車を引くことになりますが、
ここでも、乱暴な言葉が出てきます。

こんな風に憎々しい言葉って、
実生活では大概、理性で抑えると思いますが、
でもこれはおはなしなので!
思いっきり嫌な感じで吐き出すと、
不思議と愉快な感じがしてくるんですよね。

「へん!ありがたいこった!」
「いやだね、そんな話じゃなかったぜ。」
「まっぴらごめんだよ。」
「誰がてめえたちに、俺様のクルミ山へ入れって言った!」
「こっぴどい目にあわしてやるから」

等々、いや〜な感じで口に出すと、
なかなか気味がいいんですよ(笑)。

やがて車には、待ち針と縫い針も乗り込みます。
突然、生き物じゃないものもやってきて、しゃべったり歩いたりする。
これも面白いです。

そして、とある宿屋に泊まった面々は、
どんちゃん騒ぎをして、
宿屋の主人には代金も払わず、
それどころか、ひどい目にあわせる仕掛けをして、
自分たちはとんずらしてしまいます。

話の最後は、さんざんな朝を過ごした宿屋の主人が
「これからは、ならずものは決して泊めまい。」と決意して終わります。

一見、教訓のような形で締められますし、
実際、連中のふるまいは、いけません。
でも、語り方がとってもおかしいので、
嫌な感じがしないんです。
むしろ、このはなしの醍醐味は、
ならずものたちの気分を味わうことなんじゃないかと。

やってはいけないことを、お話の中でやってしまう。
それを語ったり聞いたりすることで、
心に溜まった澱が解消されるから、
なんだか楽しくなるのかもしれません。

底本は、『おはなしのろうそく17』(東京こども図書館)です。
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by yoinezumi | 2018-04-27 14:03 | おはなし

12月のおはなしは、
b0352427_11524471.jpg絵本『月宮殿のおつかい』読み聞かせのあと、
松岡享子作『あくびがでるほどおもしろい話』をやりました。
これが、思いがけなくとても楽しい経験になりました。

このおはなしは、物語というより言葉遊びに近く、
私にとっては初のチャレンジでした。
あらすじがあるような、ないような話で、乱暴にざっくり言うと、
ある男が、山へ魚釣りにでかけ、鉄砲で魚をしとめて食べる。

ただ、どの文にもあべこべの言葉がついていて、
北へ行ったのか南へ行ったのか、
朝出かけたのか夜出かけたのか、
山へ行ったのか海へ行ったのか、
釣りをするのか狩りをするのか、
魚はしとめたのか、逃したのか、
言葉だけ見るとよくわからないような、
でも聞いていると何となくストーリーになっていて、
しかも可笑しいのです。

果たして面白がってくれるかなあ、と思いながら
教室に立ってタイトルを言ったとき、子どもたちが
「あくびがでるなら、おもしろくないんじゃないの~?」と突っ込んできて、
それを聞いた私は心の中で、「素晴らしいコメントだよ、君!」と親指を上げましたよ!
いい手応え!
そう、そこなんです、このおはなしのポイント。

「北へ北へと進んで行った、ある南の国」
「たいへんかしこい、ばかな男がすんでいた」
「はえていない木にのぼって」
「みたこともないような、あたりまえの魚が」
…というように、次々とあべこべの言葉が続くのです。

情景が浮かびそうで浮かばないような。
でも、がんばって思い浮かべると、
昔の喜劇アニメ(トムとジェリーとか、テックス・エイヴェリー作品とか)みたいで面白かったり。
文章を一見しただけでは掴めませんでしたが、
練習で口に出しているうちに、どんどん好きになりました。

子どもたちの受けも驚くほど良くて、ちょっと感動するくらいでした。
ツッコミが徐々に笑いに変わり、
最後はどっと笑いが起きて、はいおしまい、という、
「もしかして、芸人さんの醍醐味はこれか!?」という疑似体験をしたような感じでした。
いや~、ほんとにすごかったです、このお話の力。びっくりしました。
楽しかった!

底本は、「おはなしのろうそく5」(東京子ども図書館編)です。

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by yoinezumi | 2018-01-09 12:00 | おはなし

白いかも

b0352427_15052273.jpg11月のおはなしは、ロシアの昔話「白いかも」にしました。
前月の下ネタ民話(笑)に対する
女子のクールな反応(それはそれで面白かった)から、
今回も同じクラスなので、
次はお姫さまやお城の出て来る
美しく華やかなものにしてみようと思い、
選んだのですが、これはこれでなかなかのハードな話なのでした。


あらすじを。

***

美しいお妃と結婚した殿様が、すぐに遠くへ旅立つことになります。
殿様は、御殿の外に出てはいけない、悪い人たちとつきあってはいけない…と
色々言いつけを残しました。

お妃は言いつけを守って暮らしますが、
ある日、やさしそうなひとりの女がやってきます。

その女にうまく乗せられたお妃が、
約束を破って、庭の泉で水浴びを始めたとたん、
女は豹変して呪文をかけ、
お妃を白いかもに変えてしまいます。

そして殿様が戻って来ると、
女はお妃になりすますのです。
女は悪い魔女でした。

白いかもは、卵をうみ、3人の子どもたちを育てます。
子どもたちはやんちゃで、
ある日御殿の庭に入り込みます。
魔女はすぐに気がついて、子どもたちを呼び寄せ、
なんと殺してしまいます。

白いかもが、子どもたちがいなくなったことに気づき、
御殿に飛んでいくと、
子どもたちの亡骸が並んでいます。
するとかもは人間の言葉で歌いだし、
それを聞いた殿様がこれまでのいきさつを知るのです。

そこでかもをつかまえた殿様がとなえる言葉がとても良くて。

「しらかばはうしろに、美しいむすめは前に立て!」

というのです。
すると殿様の後ろにしらかばが枝を伸ばし、
美しいむすめ(つまり、お妃)が殿様の前に現れます。

それから、かささぎが運んで来た
いのちの水と、ものいう水を子どもたちにかけると、
子どもたちも生き返るのです。

最後に衝撃の場面。
魔女は、馬のしっぽにしばりつけられ、
野原をひきずりまわされます。
足がもげたあとに火かき棒がはえ、
手がもげたあとに熊手がはえ…と続き、
最後には、風が骨をまき散らし、
魔女は影も形もなくなりました、と終わります。

***

さて、教室の子どもたちの反応は!
最初から最後まで、しーん、と静かに集中して聞いてくれました。
これは、今までに初めてというくらいでした。
大概、最初は少しざわざわ、がたがた、と声や音がして、
話が進むに連れて静かになるのですが、
このおはなしは、冒頭からみんな黙って聞いていました。

最初から何か起こりそうな予感で始まるからでしょうか。
次から次へと展開して、
悪い魔女や、殿様の呪文など、
おはなしが鮮やかだからでしょうか。

このおはなし、その後ほかの所でもしましたが、学校でも、外でも、
大人の方々からは、「怖いですね」というご感想をいただきました。
一応ハッピーエンドとはいえ、随分怖いお話なんですよね。
最後のくだりなどは、子どもに聞かせてよいものか、
という心配も生まれそうです。

私自身は「大丈夫だ」と思っていまして、
専門家ではないので、にわか知識ではありますが、
怖いものが出て来るけど最後には消えてなくなる、ことが、
心の中にある葛藤や、不安などを克服する、
という心理学的な効果もあると、本で読んだことがあります。

だから、怖いものは怖く描かれなければならず、
それが最後にすっかり消えることが大事、と思っています。

それに昔話には、残酷な場面があっても、
残虐には描かないという特徴があるようです。
リアルじゃない。
この話も、子どもたちはすぐに生き返るし、
魔女の体も、すぐ何かがはえてくる。

自分が子どもの頃には、怖い昔話にはどきどきしながらも好きだったし、
聞いた後には、何も嫌な気持ちは残らなかったので、
その時の感覚も含めて、「大丈夫なんだ」と感じています。

底本は、『ロシアの昔話』(内田莉莎子編・訳、福音館文庫)です。
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by yoinezumi | 2017-12-23 16:43 | おはなし

和尚さんにおしっこ

超スローペースなこのブログですが、
b0352427_11110877.jpg細々と続けております。

7月のおはなしは、昨年のクラスでやった日本の昔話、
「ねずみの国」にしました。
自分で節をつけた歌、結構気に入ってます(笑)。

8月は夏休みでおやすみ。

9月は、十五夜にまつわる絵本『月宮殿のおつかい』読み聞かせの後、
これも昨年やったグリム童話「おいしいおかゆ」。

以上、備忘録もかねて。


10月は、やはり同じ絵本の後に、
日本の昔話「和尚さんにおしっこ」をやりました。

『月宮殿~』は10分くらいかかる絵本なので、
素話の方は短くなければいけない(持ち時間15分)のですが、
文庫2ページくらいでも、話すと3、4分必要です。
意外に時間がかかります。

話の前振り(本の紹介など)もするので、2分くらいで終わる話を探して、
今回はとても短い笑い話にしました。

法事にでかける和尚さんのお供をしていた小僧さん。
急におしっこがしたくなります。
田んぼにしようとしても、山にしようとしても、川にしようとしても、
和尚さんに、そこには神様がいるからだめだ!と咎められる。
小僧さんは我慢ができなくなって、
「和尚さんの頭には"かみ"がない!」と言って、
和尚さんにおしっこをしました、
というお話。

単純に下ネタ…はたして笑ってくれるのか?!
b0352427_11114196.jpgと思いながらやりましたが、
男の子は吹き出す子もいましたので、とりあえずセーフ。

私も、ドリフターズの「8時だヨ!全員集合」世代でもありますし、
この話面白いと思うんですが、
話終えたあと、女の子のクールな声がぼそっと。
「…ふつうにきたない…」
たしかに、そうだねえ^^;

じゃあ、次はお姫様が出て来る話にしよう…
と思うのでありました。

絵本は『月宮殿のおつかい』(幻冬舎)
素話は『ちゃあちゃんのむかしばなし』(福音館)からです。


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by yoinezumi | 2017-11-17 11:17 | おはなし

わらと炭とそらまめ

だいぶ遅れがちな投稿ですが…
b0352427_11042713.jpg6月のおはなしは、
グリム童話の「わらと炭とそらまめ」にしました。

ずいぶん前から何故かツボにはまり、好きなお話だったんです。
でもちょっと引っかかることがあって、
これまで素話に選ばずにいました。

まずはあらすじから。

おばあさんの家で、
そら豆が、お鍋へ入れられる寸前で、床に転がり落ちます。
そこにいたのは、かまどで燃やされそうになったのを逃げ出した、藁。
そこへ、火のおこった炭が、かまどの中から跳ね出してきます。

この3つが、
お互いに、命からがら逃げ出したことを打ち明けて、
みんなで仲良く旅に出ることにします。

ところがすぐに大きな川にぶちあたり、
藁が、自分が橋になるから、そら豆と炭はその上を渡ればいい、
と横たわります。

いや…それ、どうかな?
藁が橋になる??
と、読んでる方は思う訳ですが…

せっかちな炭が、すぐに駆け出して藁の上に乗りますが、
ざあざあ言う川の流れに怖くなって立ち止まってしまいます。

しかも炭の火はまだ消えてなかったらしく、
藁はあっというまに燃えてしまい、
炭も水に落ちてじゅっと音を立ててお陀仏に。

あ〜あ、言わんこっちゃない…と、これも、読み手の心の声です。

さて、
この顛末を見ていたそら豆が、なんとも乾いた反応を!

そら豆は、ばかばかしくなって大笑いするのです。
ところが、あんまりひどく笑いすぎて、
からだがぱちーん!と破裂してしまいます。

そこへ居合わせた仕立て屋さんが情け深い人で、
やぶけた箇所を縫い合わせてくれ、
そら豆は一命を取り留めますが、

仕立て屋さんが黒い糸を使ったので、
今でもそら豆には黒い縫い目があるのですよ、
というお話。


…アナーキーというか、ブラックジョークというか、
大人っぽい意地悪なセンスを感じます。
私は好きだけど、
子ども達にどんな風に話したらいいかな…と迷いがありました。

でも、何度も口に出して覚えているうちに、
これは結構役に立つ話では!?と、はたと気づきました。

藁や炭の取り扱い注意って話にもとれるんです。

最初、
「(おばあさんが)火がはやく燃えあがるように、藁をひとつかみ、くべました」
というくだりで、
わらは火がつくとあっというまに燃えることがわかる。

そして、炭はいちど火がおこると、
一見、灰になって燃え尽きたように見えても、
中にまだ火がついていることがあります。
だから藁が燃えて炭は水に落ちてしまう。
水に落ちれば、じゅっと音をたてて火は消えます。

このおはなしを聞くうちに、
藁と炭の性質、火の取り扱い方がわかるんじゃないかしら??

というわけで、自信を持って、おはなしをしたのでした。

原文がどうなっているのか知りませんが、
岩波文庫の翻訳(金田鬼一)は、3人の会話口調もとても面白くて、
それぞれの性格がよく現れているので、
語るのが楽しいです。

藁は気さくで気のいい奴、
炭はちょっと心配性?

そら豆は、
仲のいいお友達になりましょう、
なんてお上品に調子のいいことを言っておきながら、
最後には仲間の不幸を笑ったりして、
けっこうひどい奴だったりもします。

こんなところも、人生の苦みとしてお話の中に組み込まれているのかも、
なんて深読みもしたくなったりします。

底本は「完訳グリム童話 1」(岩波文庫)です。

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by yoinezumi | 2017-10-13 18:55 | おはなし

魚売りと仙人

すっかり書き込みが遅くなってしまいましたが、
b0352427_12435946.jpg今年度は、昨年と同じ小学校で、
5年生のクラスでおはなしをすることになりました。

友人の紹介で、公立小学校で月に1回程度、
昔話を話に行っています。

第一回目は5月、中国の昔話「魚売りと仙人」にしました。

何の変哲もない魚売りの男が、
ある日不思議な夢を見たのをきっかけに、
物乞いの姿をした仙人から
不思議な真珠を手に入れることに成功します。

それからは、
塩漬けの魚を生きた魚に変えることができるようになり、
大儲けをするのですが、
不審に思った仲間に真珠を取られそうになって、
その真珠を思わず飲み込んでしまいます。

ところがそれによって、
男はさらにすごい術を身につけることができるようになるのです。

これも、魔法のでてくる話で、
私の好きなタイプです。
他の中国の昔話にも良く出て来る仙人たちは、
どうやら大概の場合、
物乞いのようなみすぼらしい姿をしています。

見た目と裏腹に、とてつもない力を持っている、
というのはとても面白いと思うのです。

人間はステレオタイプな見方では推し量れない、
と言われている気がします。

しかも仙人自身は、魔術によって優雅な暮らしをするわけでもなく、
本当に物乞いをしながら、または山奥で古い祠に住んだりしながら
暮らしているんですよね。

道教の修行とも関係がありそうですが、
ともかく、術で人助けはするけれど、
自分はそれで得をしているわけではないようなんです。

謎の人たちだけれども、
何か不思議な力を持っていて、
普通の庶民が時折、その恩恵を受ける。
ただ、「虎になった弟(人虎報仇)」でご紹介したように、
その結果が吉なのか凶なのかは、
どちらとも言えない場合もあります。

この白黒つかなさが、
また魅力であるかもしれません。

底本は、「中国民話集」(岩波文庫)です。

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by yoinezumi | 2017-08-24 12:48 | おはなし

今月は、谷中のエスノース・ギャラリーでの素話イベントで、b0352427_18492644.jpg「人虎報仇」という、
『聊斎志異』(蒲松齢・作)という物語集からの一編を話しました。
(他はこれまでに語ったことのある、
「ねずみの国」「マーシャとくま」「ちえ者のグレーテル」)

これは作者のある小説で、昔話ではないのですが、
蒲松齢が中国の様々な伝承を取材していたらしく、
昔話のテイストが強く感じられ、
語って面白そうだと思ったので選びました。

といっても、元の文章は日本語訳も漢文調で、
熟語が多くきりっと締まったかっこいい文体です。

これは、文字を読むにはとても魅力的なのですが、
耳だけで聴いても筋がわかりにくいだろうということで、
まことに勝手ながら、
おはなし調に全文直しました。
(もとになった本は会場でお客様にご紹介しました。)

タイトルも「虎になった弟」としました。

物語は、
仲のよい兄弟の兄が、
あることで若旦那の怒りを買い、
殺されてしまう。
その仇討ちをしようとした弟が
道教の坊さんの術によって虎の体にされてしまい、
仇は取って人間の姿に戻ったものの、
その後は寝たきりになってしまうというお話です。

話し終えた後、
お客様が「弟は鬼になってしまったということですよね。」と言われました。
なるほど、私はそのまま文字通り受け取っていましたが、
弟の心を虎という形で表現したと考えるとまた面白いです。

昔話、伝承話(今回はそれをもとにした(?)小説ですが)は、
聞いた人によって様々な受け取り方ができる気がします。
そこが、とても開かれた感じがする。
今回は大人の方が多かったので、
終わった後に色々ご感想など聞くことが出来て、
貴重な体験でした。

また、どうやってお話を選ぶのか、という質問もありました。
「すごく好きな箇所があること、言いたくなる言葉があること」と答えましたが、
この「人虎報仇」の場合は、
緊張感のある展開と、
神仙の術が出て来ることでしょうか。

魔法の話は好きです。
不思議な話には魅力を感じます。

そういえば子どもの頃、
「自分は魔法使いだ」って友だちに言ってたな…。
半分は願望、半分は信じてるんですよね。
幼稚園児だったので友だちも半信半疑です。
(←友だちのお姉さんには嘘だと言われましたが、
そりゃもう、いたしかたない。)

おままごとのハタキの柄を、
魔法の杖にして遊んでいました。

子どもはからだ半分ファンタジーの世界で生きてる気がします。
…私だけじゃないですよね…?

底本は、『新編バベルの図書館6』(ホルヘ・ルイス・ボルヘス編纂、国書刊行会)です。


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by yoinezumi | 2017-04-25 19:20 | おはなし

マーシャとくま

小学校での今年度最後のおはなしは、b0352427_17192034.jpgロシア民話「マーシャとくま」にしました。
ひなまつりの日でしたので、
女の子が主人公の話を選んでみました。

おじいさんとおばあさんに育てられているマーシャという女の子が、
森で友だちとはぐれてしまい、
熊の小屋に入り込んで捕まってしまって、
やむをえず一緒に暮らすことになります。
熊に、もう逃がさんぞ、ここで暮らしてもらおう、
黙って外へ行ったら食べてやる、と脅されるのです。

これ…大人が読むと結構な大事件にも受け取れませんか…。
が、物語は淡々と、できごとを語るのみ。

昔話で私が好きな点のひとつは、これです。
できごとをシンプルに語り、
叙情や感傷、飾り立てなどは、ほぼ無しです。

何が起こったかに徹していて、
乾いた、というほどではないにしろ、
ベタつきのないさらっとした語り口。
そして「次どうなるの?」というドライブ感。
なんか、かっこいい…って思っちゃいます。

だけど、読んだ人聞いた人が自分の経験などに照らし合わせて、
自由に登場人物の思いや、できごとの背景などを想像して、
自分だけの世界を作り上げることもできる。
しかも特に正解はない。
何しろ、昔話は詠み人知らず、作り手知らずですからね。

扉の鍵だけを渡してくれて、
あとは自分で感じ取ればよい、
もしくは、
「わからなくてもいいから、持っておきなさい、
あとで役に立つ時がくるかもしれないよ」
というのが昔話なのかもしれない、なんて思います。

マーシャは、考えて考えて、
熊をある意味手玉にとって、家へ帰る作戦を思いつきます。
これまた、深読みするとすごい気がします。

とはいえ、お話の印象はかわいくてわかりやすく、
熊も最初は怖い気もするけど、
中盤からは愛嬌があります。

私がこの話を選んだ一番の理由はラスト。
おじいさんとおばあさんが最後に言うひとことです。
これこそが、自分の知恵で困難を乗り越えたマーシャに同化した
読み手、聞き手へのご褒美のように思えるんです。

底本は、「ロシアの昔話」(内田莉莎子編・訳、福音館文庫)です。
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by yoinezumi | 2017-03-22 17:29 | おはなし

節分の火/ねずみの国

b0352427_19334861.jpg今月は節分にちなんだ短い話と、もうひとつ日本の昔話をしました。

ちょうど節分の日だったので、せっかくの機会だと思い、
節分について辞書で調べて、
おはなしの前にその意味を少し説明しました…が、
これはちょっと失敗。

おはなしを聞こうと待っていた子どもたちが、
すぐにざわざわがたがたして気が散りました。
席を立つ子もいました。

そして、おはなしを始めると、しん、として耳を傾けてくれたのでした。

たしかにウンチクって、
押し付けがましいところがあるしな…
と反省。
でも『月宮殿のおつかい』の時に「月宮殿」の説明をした時には
ちゃんと聞いてくれていたから、単に
「節分の意味くらい知ってるよ!」だったのかもしれません。

いずれにしても、
"「教養」っぽいことをただ教えられても、面白くない"、
というのは気に留めておこう。

さて、
「節分の火」は、

ある家の女中が、
節分の夜だけは囲炉裏の火を消さないように、
と主人に言われるのですが、
夜中につい眠ってしまった間に、火が消えてしまいます。
誰かに火を分けてもらおうと外に出ると、
棺桶を背負った人に出会います。
その人は、棺桶を預かってくれたら火を分けてやる、と言うのです。

「棺桶」という言葉が出て来ると、
子どもたちの雰囲気が引き締まりました。

私自身も読んだ時そうでしたが、
ただならぬものが出て来ると、
どうなるのか、先を知りたくなりますよね。

わけあって「棺桶」を預かった女中が、
最後にはお金持ちになってめでたし、というおはなしです。


「ねずみの国」は、

ねずみにそばもちを食べさせたじいさまが、
お礼にねずみのうちへ呼ばれてごちそうや歌でもてなされ、
おみやげをたくさんもらって帰ります。

それをまねした欲ばりなじいさまが同じことをやって、
たいへんな目に会う(最後はもぐらになってしまう!!)おはなしです。

この話を練習しながら気づいたのは、
欲ばりなじいさまのエピソードの方がいきいきしていること。

最初のじいさまのところはあっさりと終わって、
欲ばりなじいさまのくだりの方がずっと面白いんです。

ねずみの国に行くまではいいのですが、
欲ばりなじいさまは
「ごちそうや歌よりも、おみやげをもらって早く帰りたかった」。

日々の生活の中で、
そういうわけにはいかないんだけど、
本音を言うと…っていうような、
ちょっとした解放感が、
ここには感じられるんです。

昔話で欲ばりなじいさま(又は、ばあさま等々)のすることには、
誰でも心のうちに持っているだめな部分とか、
思っていても表に出してはまずいようなことが
託されているのかも?
それをやっちゃあおしまいよ、というようなことが。

このおはなしには歌の部分があって、
ただ棒読みしてもつまらないので、
適当に作曲して歌いました。

もともと素人がそれぞれに語り継いできたものだから、
好き勝手に歌っていいだろう、と。
昔話の研究者から聞いたことですが、
「正統な昔話」というのはないそうです。
だから、いいんです!

というわけで、
歌いながら、昔話の懐の深さというか、
語り手にもよりそってくれるような安心感を感じています。

底本は前にも紹介した、
「ちゃあちゃんのむかしばなし」(中脇初枝再話・福音館書店)です。

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by yoinezumi | 2017-02-28 18:30 | おはなし | Comments(0)

ちえ者のグレーテル

b0352427_18311309.jpg1月のおはなしは、グリム童話「ちえ者のグレーテル」にしました。

食いしん坊の料理人グレーテルは、
主人とお客さまのためにこしらえた鶏の丸焼きを、
自分でふたつとも食べてしまう。

それには、当人としてはもっともな理由があるのですが、
(へ)理屈を言いながらだんだん焼き肉を食べ尽くして行くところが、
とてもおかしくて面白い。

食いしん坊ならではの、
料理を大事に思うからこそなんだけど、
自分の都合のいいように解釈するんです。

ところが、来ないと思っていたお客さまが
なんと来てしまった!

その時のグレーテルの対応が、
あまりにもすばやくちゃっかりと機転を利かせています。
プチ悪です。

私が好きなのは雇用主であるだんなさんの反応で、
グレーテルとだんなさんの会話がとてもいい。
翻訳も滑稽であたたかい魅力があります。

なんだかこのだんなさん、ちょっとお人好しというか、
全然グレーテルを疑ったり叱ったりしなさそうなんです。
グレーテルにとってはきっと、いい職場!

最後はとても素晴らしいオチがつきます。
昔のサイレント喜劇映画のような映像が目に浮かびます。

子どもたちは、こないだと同様(といっても違うクラスの6年生)、
笑いが起こるまでにはなりませんでしたが、
目がにこにこしている子どもがいたので、
まあよしとしよう!というところです。

それに以前、姪に話した時にはクライマックス(?)のところで
吹き出してくれましたしね。

底本は『完訳 グリム童話集2』(金田鬼一訳、岩波文庫)です。




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by yoinezumi | 2017-02-10 18:33 | おはなし